マタンゴを見た

 クリスマスに全くそぐわないのであるが、映画「マタンゴ」のDVDを借りてきて見た(借りて来たのは昨日)。ちなみに一緒に借りたのは「ガス人間第一号」、「拳銃無頼帳 抜き打ちの竜」などの60年代邦画。
 「マタンゴ」はホジソンの「闇の声」を原作に星新一らが翻案し、本多猪四郎円谷英二らが作成した1963年の東宝作品(天本英世も出演。多分キノコ怪物をやっている)。
 無人島に漂着した男女。その島には飲み水こそあるものの鳥もよりつかず、魚もとれない。唯一きのこだけはあるのだが、先に漂着していた船に残されていた記録によるとそのきのこはマタンゴという名で、強い麻薬効果があるらしい。しかもそれは食べた人間をきのこの怪物にしてしまうという代物だった(ちなみにどのタイミングで主人公たちがその事実を知るのか見てても解らなかった。いつのまにやら知っていたように見えたぞ)。
 きのこの怪物の造詣や、サイケデリックを少々さきどりしたような映像など見所は結構ある。だがなんといっても圧巻なのは主人公たちの心理描写であろう。極限状況における人間の行動が非常になまなましい。登場人物が皆印象的でキャラがたっている分なおさらである。きのこ人間の醜さが人間の内面のメタファーに見えてくるほどだ。
 また、きのこを食った人間の表情が、ラストの主人公の独白(現代批判の部分ではなく、その前の自分の島での行動についてのね)とうまく結びついてるのに感心。
 非常に無駄の少ない、意外なほどの良作だった。