ゴジラ(初代)

 1954年東宝作成の初代ゴジラを見た。私はゴジラ映画自体見るのがはじめて。
 小さいときからなんとなく特撮物を敬遠していたのでテレビの戦隊ものとかも全然見ていない。どうせ作りもんじゃん的な偏見を持っていたからだろう。同じような理由でアニメも結構苦手だった。声をあてているのは実在する人間であるというのが嫌だったように思う。大山のぶ代ドラえもんの声を出しているのを見て泣いてしまう子供と同じようなものなのだろう。うまくいえないのだが、作り物なら作り物だけでその世界を完結させて欲しいのである。なるたけ現実の人間が入り込む余地を少なくしてほしいというか。だから子供のころから漫画や小説がすきだった。今でもゲームやっててキャラクターが喋るのにちょっと抵抗がある。
 今から思えば進んで自分から楽しみの幅を狭めていたようにも思うのだが。
 ゴジラは今年(といってもあと数時間だが)が生誕50周年で、かつ映画殿堂入りしたこともあり、テレビで取り上げられる回数も結構あったように思う。ただ、一度も原作書き下ろした香山滋の名前が出ないんだよね。筑摩が単行本化したくらいか。まあ、俺もまだ読んでいないのだが。ミステリだけでなく異郷探検ものなどの空想科学、冒険小説の戦後を代表する書き手なのにね。同期デビューの山風先生の日記ではあんまりよく書かれていなかったが。
 戦後10年で作られた作品だけに、作中の「せっかく長崎の原爆を生き延びたのに」とか「また疎開か」といったぼやきがリアル。また、威勢のいい女性議員役の菅井きんが若くてかっこいい。むかしの社会党にいそうだ。
 秘境探検ものでは現代人が足を踏み入れない場所に、別の進化をたどった未知の生物がすんでいるというのが定番だが、ゴジラでは逆に未知の生物が自ら(水爆実験をした人間が呼び寄せたとはいえ)境界を越えてこっち側にやってきてしまう。しかも圧倒的な暴威を伴って。
 ゴジラの蹂躙した後の景色が空襲被害を連想させたり(話全体を通してどこか海野十三の空襲小説との類似も感じた)、原水爆への言及や、秘密兵器ともいえる「オキシジェンデストロイヤー」を偶然開発した科学者が、今後これを戦争に悪用する人間が出てくることを考えると今使うことが出来ないと嘆くシーンなど色濃く「戦争」からの影響を感じさせる。
 そんなことを置いておいたとしてもパニック物としても十分面白かった。正直こんなに面白いとは思わなかった。後個人的には小学生のころ好きだった漫画「究極超人あーる」と「宇宙家族カールビンソン」にでてくる台詞の元ネタが解っただけでも嬉しかった(「またじいさんのゴジラがはじまった」「言い伝えをバカにするでねえ」「私は見た、あれはジュラ紀の生き物だ」)。俺は子供のころ特撮に興味ないくせに好きな漫画には特撮からの引用が多かったりするんだよな。