氷川瓏「乳母車」

ちくま、「氷川瓏集」収録。
著者は作家ひかわ玲子の叔父。乱歩の作品の子供向けリライトでも知られる。玲瓏ってあたりが粋ですな。
「乳母車」はデビュー作。乱歩の目にとまり宝石に昭和21年に掲載された。
この選集、収録作ではこの処女作が圧倒的だった。ページ数はたったの3ページ。正直立ち読みで速攻終わる。
真っ暗な夜道で偶然出会った乳母車を押している若い女性。なぜこんな夜更けに・・・といぶかしがりながらも語り手は興味をそそられる。思い切って話しかけてみると、乳母車で寝ているのは年端もいかない女の子とのこと。ふと語り手が覗き込んでみると、そこには・・・。
幻想譚ないしは怪異譚というのが一番適切だとは思うのだが、そこには超常的なものは一切ない。語り手が見たものが意味するところも大体想像がつく。想像がつくからこそ、薄気味が悪い。理解が出来る分、妙に生々しい怖さがある。無駄なところが一切ない見事なまでの一品。