城昌幸集みすてりい

城昌幸(1904〜76)のアンソロジー読了。いわゆるショートショート的作品を集めたもの。大正時代から書いているので少なくとも大衆小説の分野でのこのスタイルの書き手としてはかなり早いのでは。
この集成は2部構成となっており、前半部分は著者が昭和38年に刊行した自選ベストともいうべき「みすてりい」を、後書き、乱歩による解説までつけ完全に再現したもの。後半部分がそれ以外の作品から選ばれたいわば他選による傑作選となっている。
前半部分の作品をいくつか読んだ後での正直な感想。
「あれ、意外に面白いぞ・・・」
何故意外かというと、私は数年前に春陽堂から出ている作品集「死人に口なし」を読んでいるのだが、正直大して面白いと感じなかった。オチもそれなりに解るし何か平凡だと感じた。
私の感性に変化があったのかとも思ったのだが、少なくとも理由はそれだけでは無い。私が感心した作品の大半は昭和20年代から30年代にかけて書かれた物。以前に読んだ作品集は昭和11年に刊行されている。その差も大きいのではないかと思う。後年の作品のほうが話の持っていきかた、表現などが洗練されている印象がある。情念や勢いで読ませるタイプではないから余計にそう感じるのかもしれない。乱歩が彼を「詩人」と評したのも(つうか、実際詩人としての活動もしている人なので「評した」というのはちょっと違うかもだが)少しは解るような気になった。期待値が低かった分なんかもうけた気分だ。