山男の四月(初期)

「山男の四月」は怪しい中国人からもらった丸薬を飲んだら、正に自分が飲んだのと同じような丸薬へと変身してしまったという男の話で、怪奇譚チックな不思議な味わいをもったおはなしである。この話には初期バージョンとして細部の微妙に異なった異稿が存在する。どちらもちくま文庫の全集に収録されている(8巻。ほかには「オツベルと象」などが収録。学校の教科書にのってませんでした?ちなみに私は国語、同居人は道徳の教科書でみたとのこと)。
異稿のほうを読んで感激したね。何がって鬼太郎の「妖怪反物」の元ネタだったので。
「山男」の異稿版では丸薬を飲むところは一緒なのだが、飲んだ後男が変身するのは反物なのである。そしてもとに戻るには

「私共を水に漬けて、よく揉んでやって下さいませ。さうしてから、丸薬をのめば、きっとみんな、もとに戻ります」

ということである。
鬼太郎の「妖怪反物」は紅衛兵に中国を追われた九尾の狐(すげえぜ紅衛兵!)が日本にやってきて、日本の妖怪に友好のしるしと称して丸薬を飲ませる。その丸薬を飲んだ妖怪はみな反物になってしまうというもの(鬼太郎の反物はちゃんちゃんこの模様どおりのツートンカラー)。こちらももとにもどすのは「水にひたして、洗濯する」必要がある。
宮沢賢治はネタもととしてはそう意外ではないが、実際に発見するとやはり嬉しい。水木しげるマンガには背景やキャラクターの造詣などで有名絵画のパロディがあったりする。こういうのを見つけるのは結構楽しい。