スタージョン「影よ、影よ、影の国」

現在は絶版なので図書館で借りてきて読んだ。備忘用に収録作を記す。
①影よ、影よ、影の国
②秘密嫌いの霊体
③金星の水晶
④嫉妬深い幽霊
⑤超能力の血
⑥地球を継ぐもの
⑦死を語る骨
①は河出からでている短編集「不思議のひと触れ」に収録されているので既読。
②〜④は(ブラックでない)ユーモア色が強く最後にきちっと落としている。アメリカ小説の伝統の一つであるホラ話の系列で「時間のかかる彫刻」収録の「フレミス伯父さん」に近いテイスト。
②は特殊な霊媒体質の女性と結婚した男が、彼女の体質のせいでトラブルに巻き込まれまくる話だが、主人公の不屈っぷりが恰好いい。こういうしたたかな主人公ってのはこの作者では珍しいか?
③は異星人とのコンタクトを描いたもの。普段パッとしない男が重大な場面で意外な一面を・・・というある意味で定番な展開。ただ話しの落とし方は見事。
④は幽霊にストーキングされる女性をどうにか助けようとする男の話。ほとんどジョーク。新聞の人生相談に相談するなよ・・・
⑤はなんかピンとこなかった。
⑥は個人的にはこの短編集のなかではベスト。疫病にやられ繁殖能力をなくした人類。残された者たちは人類の知恵と「ヒューマニティ」をラッコに託そうとする。何故ラッコ?という感じだが実はオチと関係がある。スタージョンの傑作短篇「ニュースの時間です」と同様、途中までたんたんと進み、最後の一行で鮮やかに決めるという私の一番すきなパターン。
⑦もあんまりピンとこなかった。