マグラア「失われた探検家」

図書館で借りて読んだ。解ってはいたことだが歪んでいるというかなんというか。ある意味で梅雨時に読むのにぴったりではある。
特に気に入ったものはまず「蠱惑の聖餐」。蝿を語り手に彼らの「聖餐」を描いたもので、汚濁も極めればある種の美しさを帯びるというかなんというか。「頭がくらくらするような複眼の流し目」とか「卵の混じった昆虫の愛液」とか悪趣味極まりない所が良いね。
次に「アーノルド・クロンベックの話」。ある女性記者が駆け出しの頃取材した連続殺人犯との思いでを語るというストーリー。後半の展開は丁寧に伏線を張っているため予想範囲内。個人的に感銘を受けたのはその語り口。若かったころの自分の野心や殺人犯に会見した時の感情、その後自分が巻き込まれた事態などをかなり冷静に感情を交えず回想している。結構大変な目にあったはずなのだが・・・。そんなある意味でプロフェッショナルな、距離をとった語りのおかげでラストの一言も非常に生きている。
結構面白かったが購入するかどうかは微妙。