ヘミングウェイ「移動祝祭日」より

文学的に言うと、LOST GENERATIONというと、1920年代の(一次大戦の)戦後世代による新しい文学潮流をさしていたが、この言葉を有名にしたのはヘミングウェイの「日はまた昇る」のエピグラフとしてひかれたガートルード・スタインの発言である。

You are all a lost generation

そしてこれは響きは何か格好いいが、別段高尚な話ではなく、実際は自動車修理工に対するスタインの不平だったりするのも有名な話である。
このやり取りをしていた時のことを後年(というか晩年)、ヘミングウェイは「移動祝祭日」の中で次のように述べている。

私はミス・スタインや、シャーウッド・アンダーソンや、自己中心癖や、精神的怠惰対自己鍛錬のことを思い、人を自堕落な世代(ロスト・ジェネレーション)と呼ぶなんて何様のつもりなんだ、と思ったりした。
(中略)
だいたい、どんな世代にも自堕落な部分はあるのだ。これまでもそうだったし、これからもそうだろう、と私は思った。
(中略)
薄汚い、安直なレッテル貼りなどくそくらえだ。

これがそのやりとりの約30年後に書かれた文章であり、その間スタインとの関係も変遷していったことを考慮に入れる必要はあるだろうが、至極まっとうな感想ではなかろうか。
どこでもいつの世でも、世代論なんて大なり小なりレッテル貼りであり、語ってる人は偉そうに見えるものなのだろう。