徳川夢声「問答有用」藤田嗣治との対談

藤田の語るモディリアーニとの思い出

酒飲みでけんかばかりしてるんです。先日死んだキスリングなんかと、しじゅうけんかしましてね、あたしがいつも仲裁役ですよ。柔道を知ってるというので、ぼくが出ると、けんかがおさまるわけですね。
第一次欧州大戦中に、モディリアニとスーチンとぼくと三人で、ルノアールが住んでた南仏のカーニュという村へいったことがあります。モディリアニが、監獄へ二度くらいはいってたことのある悪党をつれてきましてね、「お前、柔道をやってみせろ」ってんですね。そこのテラスで、ぼくはその男をたちどころに投げた。それをみて、モディリアニが恐れをいだいてね、以後、サロン・ドートンヌあたりの連中は、ぼくには手を出しません。