久生十蘭集(筑摩)

創元のアンソロジーとともに最も手に入りやすい一品。内容的にも十蘭入門には最適ではないかと思う。図書館で全集借りて読むというのもありだが(私はそう)。
この選集で一番感心したのはその作品の並び順。最初に代表短編の「黒い手帳」と「湖畔」を配し、一種異世界の人獣婚のような「海豹島」のあと、ロマンス譚の「墓地展望亭」、十蘭版ロストワールド「地底獣国」と続く。単体で読むとどこか型どおりにも思える「墓地展望亭」が非常に映える。ジャンル的には浮き上がってもおかしくないのに。その後円熟期の作品が続き、最後にオマケがつくという見事な構成。おすすめです。