深夜の散歩

福永武彦中村真一郎丸谷才一がミステリを読む楽しみについて語ったエッセイ集(対談とか合作エッセイなどはなく、それぞれが個別に語っている)。1960年代に出版されているため、紹介されている作品のなかには今ではあまり読まれていない/読むことの難しいものも入っている。また当時編集者だった都筑道夫の名前が文中に出てくるなどの隠れた見所もある。
中村真一郎のパートの「この人生の軽さ」に本筋とはあまり関係はないのだが妙に印象に残った文章があった。

二十歳のぼくが無闇と高速度で古今東西の古典を読み漁っているのを見て、堀さんはゆっくり読むことを勉強したまえと忠告してくれた。芥川さん(堀さんの先生の芥川龍之介)は「早くしか読めない人」だったが・・・・というのが、堀さんの意見だった。

「早くしか読めない人」というのが妙に芥川のイメージにマッチしているなあとちょっと面白かった。ちなみに「堀さん」とは堀辰雄