スタージョン「原子力潜水艦シービュー号」/「地球の危機」

「地球の危機」は1961年に公開されたSF映画。スタージョンの「原子力潜水艦シービュー号」はそのノベライズ(Not 原作、ちなみに原題はどちらも同じ)。神保町でスタージョンのほうを見つけて購入。どうせだったら映画見たあと読もうと思い、DVDを借りてきて見る。
ストーリーはどちらもほぼ同じ。地球が火の帯に取り巻かれて気温が上昇しまくってしまうという異常な状況が発生する。それに対し国連では
①ほっときゃ収まる派

②収まったときゃ俺ら皆死んどる派
に分裂。
後者の代表であるネルソンは周囲の無理解と反対を押し切って、個人所有の原子力潜水艦で事態を打開しようと行動にでる。
細かな違いというと映画のほうが見せ場を作る必要からかトラブルが頻発する。しかもそれに対処するネルソンは管理者として無能としか思えない。そのためかなんかグダグダとゴタゴタが続いたあげく、いつのまにか丸く収まったという印象が強い。ノベライズのほうが犯人の動機なども含め内面的な描写がちゃんとしている分地味ではあるが、ストーリーが良く解る。両者を比べてみて興味深かったのはとある登場人物の描かれ方、というか役割が全く異なること。映画のほうではクライマックスに向けて非常に重要な役割を果たすのに、小説のほうでは終始良く解らない人のままだった。スタージョンらしいといえばらしいのだろうか。
小説のほうはスタージョン関連は全部集めたいという人以外は別に読まなくていいんじゃないかという感じ。スタージョンを最初に読むなら、「人間以上」や「夢見る宝石」、諸短篇を読んだほうが絶対にいいし。映画は古い特撮映画に興味のある人向き。私は結構楽しめた。コックや船医、乗組員は結構いるのに彼らが働いている潜水艦の内部にまったく生活感が無かったり、大蛸と海中で格闘したりとノスタルジックな感じを味わえる。