文豪と煙草

「ひかり」(百輭集成「爆撃調査団」収録)より。
夏目漱石の家には「朝日」という銘柄があったとのこと。

書斎の隣りの客間にはいつも朝日が出してあった。家にはもう一本もなく、帰りに買って行く金もなかったので、そこに出してある朝日をみんな貰って帰った事が何度もある。先生は何故朝日をお吸いになるかと尋ねたら、何故と云う事もないが家の者がいつも朝日を買って来て入れて置くと先生が云った事がある。

あまりこだわりはなかったのだろうか。
一方芥川龍之介

芥川龍之介君がバットを愛用して、愛用すると云うよりも滅茶飲みをした。指の先が煙脂で赤茶けていた。たしか六銭の時代であったと思う。それが七銭になったのを残念がって、バットは六銭でなければバットらしくない。七銭のバットなんか変だよと云って世の無常をかこつ様な顔をした。

この(ゴールデン)バットは塩と煙草の博物館で復刻版が売っていたので買ったことがある。今でも売っているのだろうか。