いい男と弁当

泡坂妻夫の「亜愛一郎の狼狽」は亜愛一郎三部作の冒頭を飾る作品集で、第一話の「DL2号機事件」は作者のデビュー作でもある。探偵役を務める亜・愛一郎は容姿端麗なのだが、どこか飄々としてつかみどころがなく、雲の写真を熱心にとったりする変わり者。しかし実は鋭い観察力と推理力を持ち合わせており、変わった事件に出くわすと鮮やかに謎を解いてみせる。容姿と性格から他人に警戒心を起こさせず懐に入り込めるという点ではイギリスの片田舎の有名なお婆ちゃんに通じるものがあるかもしれない。
この作品集収録の「掘出された童話」で同行している知人が亜に対して次のようなことを言う。

いい男なんてものは、弁当を買う以外、あまり役に立たねえもんだ。

なんでいい男に弁当買いにいかせると役に立つんだろうか(作中に答えはありません)。おばちゃんがおまけしてくれんだろうか?