中村雅楽全集4「劇場の迷子」

戸板康二雅楽シリーズ。全集は全5巻だが、来月出版予定の最終巻は長編を納めているので短編集としてはこの巻がラスト。
77年から91年までの作品が収められている。著者が93年1月に亡くなられているので晩年の作品ということになる。
老歌舞伎俳優の中村雅楽が日常の様々な謎を解いていくというのが基本だが、このあたりにくると人生相談や悩み相談な感じが強い。どちらかというとストーリー重視で、一時期あまり出てこなかった江川刑事が結構でてきたり、新キャラクターとして雅楽お気に入りの雑誌レポーター関寺真知子が登場するなどそのストーリーを盛り上げる。
以下気になった記述。
雅楽は「ミステリマガジン」を毎月読んでいるらしい(「おとむじり」)。
登場率のあがった江川刑事の描写

すし初の戸がガラリとあいて、山城新伍に似た江川刑事の顔があらわれた。

(「赤いネクタイ」)
初期作品からでている彼の顔をこう形容したのはおそらくここだけのはず。理由はドラマ化の際に江川刑事役を山城新伍が演じたからだろう。
語り手の竹野氏が自身の姪の子や奥さんの姪の子などの話が中心、ないしは導入となるケースがいくつかある。姪、甥が多いなと思ったが、竹野氏は私の祖母と同年となる。そうすると自分に5〜6人兄弟がいて、その兄弟に子供が5〜6人いても不思議ではない。姪、甥の子供は1〜2人ずつくらいだとしても結構な数になる。考えてみれば不自然でも何でもない。ただ時代は変わったなと。