最近の読了本

ムアコック「野獣の都」
早川から以前でていたマイクル・ケインものの「野獣の都」、「蜘蛛の王」、「鳥人の森」を合本したもの。
「永遠の戦士」シリーズにはまっていた15年前でもこのシリーズは敬遠していた(今ではこのシリーズも「永遠の戦士」に組み入れられているが、当時はそうではなかった。早川では確か「火星の戦士」シリーズとなっていたはず)。
科学者が転送実験の結果、なぜか太古の火星にタイムスリップしてしまう。そしてそこには人間と巨大な獣が存在しており・・・という筋書きは私でもE・R・バロウズへのオマージュだとわかる。
この点、この本に再録された旧版の解説で示されている不安は良くわかる。作者自身が常とは違うペンネームで出した作品が邦訳初長編になるって・・・。(ちなみにこの当時の解説、語り口がいかもに70年代。アルバムのライナーノートもこういうの多いんだよな)
他のムアコックの作品と比べると、軽い。悲劇や宿命といった単語は一切、頭をよぎりません。知恵と勇気と行動力でピンチを切り抜ける王道の冒険もの。
他の作品のほうがメジャーになった今なら、この作者の以外な一面を示すものとして受け入れられるのでは?とも思う。
三津田信三「山魔の如き嗤うもの」
刀城シリーズの最新作。まあ、謎解きが最後、怒涛の駆け足になるところも含めていつもの通りかと。高水準で安定しているので、このシリーズはこのまま行ってもらいたい。ただ、初期作のような無茶な大ぶり作品もたまには読みたいです。
米澤穂信インシテミル
米澤穂信は文庫で集めているので、これも文庫化するまでまとうと思ってたのだが、我慢仕切れず購入。図書館の予約数もすごくてねえ、結局買っちゃった。我慢は一年が限界でした。
いやあ、面白い。文句なし。
これを読むまで、マイベストは「愚者のエンドロール」でした。あのミステリ読みこそが引っかかる仕掛けに私も見事にやられた。そんな仕掛けを用意しつつも、作品自体はマニア向けにならず、しっかり万人向けエンターテイメントとかしているという素晴らしいバランス。
それが今作では一層強化されていた。本当にこの人の作品は何が伏線になってるか分らんね。
十戒を模した注意書きやインディアン人形。ああ、マニアが作中で蘊蓄たれるのかしら?と思った時点で、私の負けでした。
こういうメタ的な視点をアンチミステリではなく、ポジティブな方向に使用している点が非常に好印象。こういう作品もっと出ないかね。