「平林初之輔探偵小説集2」

一巻は出てから間もなく読んでいるので、約5年ぶりくらいになる。
二巻には創作、評論、翻訳を収録。
いずれもプロレタリア文学の論客というその出自をそう強く感じさせるわけではない。
評論などはどちらかといえば「本格」志向で、小説としてのリアルさと現実的という意味でのリアルさをきちんと分けて評価している風があるのは興味深い。
多種多様となった現代からすると普通のことを言っているように思えてしまうかもしれないが。
ポピュラーカルチャーに目を向け、論評だけでなく創作にも手を染めるというのは当時としてはどうだったのだろう。
私が浅学なだけかもしれないが、文化研究の先駆けというと花田清輝とかでこの人の名前は聞いた記憶がない。対象が大衆的すぎるとだめなんでしょうか。
収録作では創作の「夏の夜の冒険」が虚実さだかならぬところが微妙な読後感を残していて好み。
絶筆となった「謎の女」は未完の作品だが、雑誌「新青年」で後半を一般応募したところ、大賞をとったのが、当時学生だった井上靖だっというのはびっくり。