細川日記より2

昭和19年2月1日の近衛公との対話

ラバウルが陥落したら、統帥部は勿論やめるだらうが、東条内閣もやめることになるかも知れない」と云はれたるを以て、余は、「その場合、内大臣の責任はどうなりますか。かかる東条内閣の如き内閣を奉薦申し上げたるは、内大臣の責任ではありますまいか」と云ひたる処、稍語気を荒げ、「そんなことを云つて居たら、内閣の替る毎に内大臣が交替しなけれやならんぢやないか」と云はれたり。然し乍ら、こは如何なるものならん。平時はいざ知らず、斯の如き非常のことをなしたる内閣を奉薦したる内大臣、而も戦争を為さざるを目的として成立したる東条内閣が、戦争を為したるが如きは明かに内大臣の不明に非ずや。このことは、公もかつて屢々云はれたることあり。而も今日の此の言葉は如何。

内大臣とは木戸幸一のことか?