E.D.ビガーズ「チャーリー・チャンの活躍」

中国系ハワイ人チャーリー・チャンを主人公としたシリーズの5作目。
ただ、チャンが実際に出てくるのは後半(冒頭から話題には挙がるが)。
近作は舞台設定が結構趣向をこらしている。物語はロンドンでの殺人事件から始まる。この事件を担当するダフ警部が前半の主人公。
被害者はアメリカからの世界一周旅行の参加者。確たる証拠が見つからないため、旅行者を足止めするわけにもいかず、一行はイギリスから出国し、他のヨーロッパ諸国を旅行していく。
一行の中に犯人がいると目星をつけた警部は一行を追っていくが、その先でも殺人事件が起こる。
事件のたびに新たな事実が発覚し、最終的にはハワイにてチャンと合流する。
限られた容疑者の中から犯人を探し出していくというオーソドックスなスタイルだが、謎解きはアリバイ崩しのように綿密に行くのではなく、ある一つの証言を元にスパっと行われる。
鮮やかといえば鮮やかだが、物足りないといえば物足りない。
個人的に一番ネックだったのは内容よりも訳文。地の文は特に問題ないのだが、会話が読みづらい。チャンが微妙に片言なのは良いとして、他のキャラクターの会話がほとんど直訳という感じでいまいち違和感がある。
同じ訳者が手がけた他の作品では特に気にしたことは無いのだけれど・・・。