乱歩全集「地獄の道化師」

自分は実はこの家の子供じゃないのかもというのは子供のありがちな妄想だが、そういう場合妄想上の実の親というのは金持ってたり、家柄が良かったりするわけだ。実の親は犯罪者とか復讐鬼っていうのもその変奏曲と見なしていいのかね(乱歩には何作かそういうのあるはず)。
しかしこの巻と次巻の「新宝島」の収録作はいまいちパッとしない。世相の影響というのはあるんだろうな。少年ものも戦後の「青銅の魔人」や「40面相」、「宇宙怪人」なんかと比べると・・・。
「大金塊」のラストを読んで、以前ふと頭をよぎった「新宝島の主人公たちが日本に帰ってこないまま終わるのは実は作者の一種の愛情ではないか」という思いを強くした。帰ってきても碌なことねえよと。