エドガー・ウォーレス「正義の四人」

乱歩もエッセイにも名前が頻出するウォーレスのデビュー作。
ちなみに乱歩に「大量作家」と言われているが、邦訳で容易に入手可能なのは本作と、「キングコング」のみ(後者は途中で亡くなっているので、厳密には単著とはいえないかも)。
法では裁けぬ悪人を処刑しようという4人組(厳密には3人+1)の話。まあ、普通に考えるとテロリストですわな。作中では無政府主義者と表現されてるが。今作でのターゲットは「外国人逃亡犯罪人引渡法案」を通過させようとしている外務大臣。彼を守ろうとする警察と、その裏をかこうとする4人との駆け引きがメインとなる。
悪人成敗型の時代劇なんかが独善的でちょっと・・・という人には不向きかもしれない。まあ、影響されて元次官宅を襲撃するような人にはもっと向かないが。
ストーリーは無駄なく進むのだが、人物描写は薄め。テンポがいいので気にはならないのだが、主人公たちの大義とやらが良く分からず、逆に外務大臣の何が悪いのかも全く伝わってこない。単純に勧善懲悪と云い難いんだよな。狙ってやってるんだろうか?
犯罪予告が新聞にのることで、殺人劇が世間的にエンターテイメントとなっていくあたりもうまいっちゃあうまいんだが、書き方があっさりしてるだよなあ。
さらっと読めるんだが、忘れるのも早そう。そういう意味では正しい大衆小説か。