竹本健治「牧場智久」もの一気読み

近所の図書館が整理期間で使えなくなるので大量に借りて一気読み。
ゲーム3部作から「せつないいきもの」まで。「狂い壁 狂い窓」だけは入手できなかったが、これは以前に読んでるので、未読の単行本は恐らくないはず。その代わり、厳密には智久ものではないが、武藤類子初登場の「殺人ライブへようこそ」を追加。ちなみにこの作品で使用されているあるトリックは私も子供のころ、使って遊んでみたことがあります。これ、今でも出来るのかな?
気に入ったのは智久&類子ものの初期2作の「凶区の爪」と「妖霧の舌」。作者自身述べているように、全社は横溝的世界(田舎と血のしがらみだけでなく、ご丁寧に美少年までちゃんといる)と当時まだ一般には浸透していなかったパソコン通信という「ハイテク」というまさに好対照の2作。
「妖霧の舌」は出版は1992年なので、世間一般にはポケベルもあんまり普及してないころじゃなかろうか?少なくとも、田舎の中高生だった私はそんなもの知らなかった。パソコンは興味があって、雑誌とか読んでたからパソコン通信なるものの存在はしっていたが、実際にやったこともなければ、やっている知り合いもいなかった(windows 3.1が話題になってたころかな)。
ただ、作中で描かれているような、家電店に置いてあるパソコンで遊ぶ客という風景はよく見たかなあ。
ちなみに阪神大震災地下鉄サリン事件が起こる2年ほど前でございます。
90年代前半で先鋭的な文化だったものでも、当然現代から見ると古びているのだが、不思議と作品を読んでいてそれを意識することはほとんどない。結局変わっているのはプラットフォームだけで、そこで行われていることは今と大差ない。いわゆる「ハンドルネーム」や「オフ会」なんかは当時リアルタイムで読んだとしたらいまいちピンとこなかっただろうが、今なら説明自体が不要な感じ。結構先駆的な作品だよな。